バラタナティヤムについて

豊かな表現、力強いリズム、そ れに音楽の三つが同様に重要な役割を果たしている 南インド、タミルナードゥ州発祥の古典舞踊です。インド四大古典舞踊のうち最古の伝統を誇っており、寺院から発生した祈り・神話の踊りです。現在の形は19世紀初め頃舞台芸術として整えられました。
バラタナティヤムは舞踊劇もありますが 基本的には女性のソロの踊りで 高度な技術と厳格な形が要求されます。アラマンディーと呼ばれる基本のポーズは、足を外輪に開き、膝を折って腰から下がひし形のようになるポーズで10世紀の寺院の彫刻からとられました。
足首に鈴をたくさんつけ 歯切れのよいステップを踏みながら 体や腕、指先、顔や目の動きでエネルギッシュにダイナミックに感情や物事を表現します。
踊りの形は ヌリッタ(純粋な踊り)と ヌリッティヤ(感情の表現)で構成されます。ヌリッタはリズムを協調した動きによる踊り。ヌリッティヤは アビナヤと呼ばれるマイムやジェスチャーを通した感情表現です。歌詞に対する舞踊主の解釈と深い理解を必要とします。
また、表現上最も重要な役割を持つのが ムドラーと呼ばれる手や 指のジェスチャーです。これによって 怒り、悲しみ、喜び、愛、動物、神、月、太陽、過去、未来などありとあらゆるものを演じることができ、ストーリーを展開していきます。しかし同じ ムドラーの形でも、踊りの種類によっては意味が異なる場合もあり、片手で演じるのと両手で演じるのとでは表すものが変わってきます。加えて、視線の動かし方や顔の表情でさらに複雑な心理状態を表現します。

バラタナティヤムの伴奏はカルナータカ音楽と呼ばれる南インドの古典音楽の様式に基づいています。演奏は、ナットゥヴァンガムを中心にヴォーカル、ヴァイオリン、フルート、打楽器(ムリダンガム)などがあります。
音楽は ラーガと呼ばれる旋律型とターラと呼ばれるリズム周期に基づいています。
「タカディミ・タキタ」などといったソルカットと呼ばれる打楽器の口唱歌(口三味線)による複雑なリズムパターンの組み合わせが中心です。伴奏をリードするのはナットゥヴァンガムと呼ばれるリーダーで小型のシンバルを奏でながら ソルカットゥを唱えます。
リズムパターンは ジャティーと呼ぼれる5種類の拍節(3、4、5、7、9拍)の組み合わせによって構成されます。
テンポは緩やかに基本速度)、中位の速さ(基本の2倍)、速く(基本の4倍)の3種類の組み合わせです。このように複雑な構成を持ったリズムパターンは アダブと呼ばれるフットワークを申心とした動きの組み合わせによって踊られます。
衣装はサリーを仕立てたもので縁にゴールドの刺繍をあしらったものを使います。膝を曲げた基本ポーズをとった時 スカートの前のプリーヅが扇を逆さにしたように広がります。スカートタイプとパンツタイプがあります。
化粧は目に縁取りをして目立たせ手と足の先などを赤く塗るのが特徴です。
アクセサリーは 頭に太陽と月を模った物やジャスミンの花を模った物をつけます。その他、イヤリング、ノーズリング、ネックレス、ブレスレット、指輪など、たくさんつけます。
■インド舞踊インド舞踊は4000年もの歴史を誇る世界最古の民族舞踊です。しかも単なる踊りではなくかつては人と神との交流手段として発達し、感情や精神を微妙に表現し得る優れた踊り手と「ヴェダ」という讃歌によってのみ神も応えて舞うと信じられてきました。
紀元前1世紀ごろには、音楽と舞踊の経典バーラタの「ナティヤ・シャストラ」が 書かれています。バーラタはインドの古典舞踊を体系づけ、詳細に記したものです。が、その影響は今日の現代舞踊の中に見られるだけでなく、他のアジア諸国に伝わる民族舞嬬の原型となっています。なかでも、タイ、ビルマ、インドネシア、などではそれが最も顕著です。
西洋のダンスとは違い 踊りが神との意志交流を図る唯一の手段だったため一挙手一動作に意味があり、わずかな目の動きにも魂が込められています。このようにインド舞踊は宗教と深いかかわりがあったため、踊り手は寺院に直属していました。南インドのバラタナティヤムを踊る人は「デーヴァダーシー」とよばれていますが、これは神様の召使という意味です。オディシイ・ダンスの「マハリ」やマニプリ・ダンスの「マイビ」も子供のころから寺院に仕え、神聖な課業に厳格に生きた人たちです。
■シバの踊りインド古典舞踊で最高の出し物はシバ神をイメージする踊りです。シバは破壊と創造を司る神様ですが、同時に「舞踊の神(ナティシャ)」「舞踊の王(ナタラージャ)」とも呼ばれています。それは心臓を中心に四方に手足を伸ばしたシバのポーズが「卍(まんじ)」の形を成し、宇宙を動かす力をあらわしており、インド舞踊そのものをシンボライズしているからです。
4本の手とそれに巻きついたヘビ、悪魔を踏みつけ片方は高く上げた足、渦巻状のヘアースタイル、太陽と月を表す両目、そして宝石飾りにいたるまで重要な意味がこめられています。従って、これを舞う時はシバの像が示している総てを表現しなくてはなりません。
 
■古代美術の中の舞踊モヘンジョダロの遺跡から青銅の踊り子像が発見されたのを始めとし、中央インド、チャンバル渓谷のパチマリ洞窟では群集の様子が精巧に描かれた壁画が発見されています。この他各地の寺院、洞窟の浮彫などにも踊り子が多く残っていて、古代インド舞踊の発達が読み取れます。
建築物も踊り子像で飾られており、特にサンチーとバールフットの塔門や欄楯、イミーグ、アジャンタ、エローラの壁画、チダンバラムやカジュラホの彫像、ハレビット、ベルールの寺院の壁にはアプサラ(天女像)が生き生きと描かれています。こうして数千年もの間続いてきたインド舞踊は、複雑で微妙な表現方法を持つ世界で最もバラエティに富んだ踊り。常に、新しい型が生まれていますが、踊りの哲学だけは変わることなく伝えられてきました。
■古典舞踊インドの古典舞踊にはその生まれた地域の別から、4つの大流派があります。
バラタナティヤム(南インド、タミルナードウ州発祥)
カタカリ(南西インド、ケララ州発祥の舞踊劇)
カタック(北インド、マトゥーラ・ブリンダバン地方)
マニプリ(北東インド、マニプール)
その他、クチプディ(アンドラ・ブラディシュ州) オディシイ(インド東海岸オリッサ州) モヒニアッタム(ケララ州)
それぞれ大きな特徴があります。